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2017.11.28
これからの変化の時代に向けてのカイゼン[19] 今回は『儲かるメーカー 改善の急所101項』【急所39】の解説です。
【急所39】 問題は、見えるようにした時点で八割解決する。(1)
見えるということはとても大切なことです。見えると分かります。分かればできます。この「見える→分かる→できる」のサイクルがうまく回ると改善がものすごくスムーズにスピーディに進みます。
ただここでいう「見える」が一筋縄でいかないのです。
私は若いころ、ある日本を代表する大会社のS会長から「柿内君、君はボルトが自然に緩む瞬間を見たことがあるかね?」と聞かれたことがありました。人がボルトを緩めるのはもちろん見たことはありますが、誰も触らないのにボルトが目の前で自然に緩むところなんか見えるわけがありません。質問の意味が分からず「ないですね~」などと情けない返事をしたのです。
するとS会長は続けて、「そうだろう。先日うちの会社の製品のボルトが使用中に緩んだというクレームがあって、技術者が喧々諤々(けんけんがくがく)の議論をしていたんだが、誰その瞬間を見ていないもんだから話がなかなか終わらなかったんだ。その瞬間を見ることができたら一瞬で答えが出るはずなんだけどね…。」とのことでした。
私たちの身の回りには結果のデータはあるけれどその過程を誰も見ていないということはたくさんあります。ただ想像でいろいろ話をしているのでは間違ったり、不必要に時間がかかったりするものです。不良発生のデータのほとんどは結果のデータです。誰も発生の瞬間を見ていません。そこに気付いて状況を見えるようにしただけで大きな問題が解決したという事例はたくさんあります。
技術の進歩で以前よりずっとモノは見えるようになっています。昔の8ミリ映写機の時代から考えると、スマホで簡単に撮影してすぐにプロジェクターで映写できる今の状況はものすごい進歩です。これ以外にも昔では不可能だったことが今は簡単にできるようになっていることがたくさんあります。
すぐに現場に行って見えていないモノを探して見えるようにしてください。
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2017.11.28
「工場改善 4大実務」セミナーのお知らせ 2018年1月23日「工場改善 基本実務」のセミナーを開催いたします。
今回は、原材料価格が2割あがっても儲かる工場改善の実務を指導!
下記の実務をお教えします!
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改善2 スペースが空き、段取り時間を短縮させる「在庫削減の実務」
改善3 利益を確保するための「《柿内式》コストカットの実務」
改善4 ムダを省くことで短納期を実現する「生産性向上の実務」
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こちらよりお申込みが可能です。
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2017.11.17
これからの変化の時代に向けてのカイゼン[18] 今回は『儲かるメーカー 改善の急所101項』【急所65】解説の最終回です。
【急所65】 設計改善は、現場改善に100倍勝る。(4)
設計というと設計図面を思い浮かべる方も多いと思うのですが、今回は設計の範囲をもう少し広げて、仕事のやり方の設計といった感じで考えてみます。
先々回の号でO社の事例をご紹介しました。営業・設計・製造間の情報の共有化をレベルアップするための席替えの事例でした。O社の場合は仕事の忙しさが半端でなくなったという問題発生からの改善でしたが、それを最初から情報が共有化できる事務所の設計というように考えられたらとてもいいですね。
今、私たち日本の製造業は大きな時代の変化点に来ています。少子高齢化による労働人口の減少は一過性のものではありません。これからずっと続きます。
そうであるとすると、現状を前提としてその中にあるムダを見つけて取っていくというこれまでのやり方だけでは十分な答えが得られない可能性があります。最初から全体最適で理想的な姿をみんなで集まってワイワイガヤガヤで設計するやり方をすることも大切です。
その時の方法ですが、最も小さいあるいは最も少ないリソース(人・モノ・設備)から始めて、もし不十分であったら一つずつ足していくといったアプローチをすると良い考え・発想が出やすいと思います。
例えば100個のランプがついている工場のランプの数を節電のために減らそうとしたときに、99個、98個と一つずつ減らしていって限界を探るやり方と、最初に真っ暗にしてしまって、次に一つひとつ増やしていくというやり方のどちらがより少ないランプの工場を作れると思いますか?私は後者のゼロから増やすやり方だと思います。引き算発想でなく足し算発想です。
例えば営業が取ってきた注文内容をその場で設計と生産技術と製造が一緒に聞いて、管理を通さずにすぐに生産ができてしまうようなシンプルな仕事のやり方はできないでしょうか?
この考え方は慶応大学名誉教授の中村善太郎先生の原点構想案という考え方に基づいていますが、私たちは現在の状況に強く影響されてしまい大胆な発想ができなくなっていることが多いのです。それを打破して革新的な改善案を出す方法としてぜひ参考になさってください。
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2017.11.09
これからの変化の時代に向けてのカイゼン[17] 今回は先回に引き続き『儲かるメーカー 改善の急所101項』【急所65】の解説です。
【急所65】 設計改善は、現場改善に100倍勝る。(3)
先回は現行の製品の設計変更の話をしましたが、今回は新規に設計をする場合の話をいたします。
みんなが生産の現場で苦労をしていた時に、設計者が設計を変更してくれたお蔭で難しい部品の組付けがずっと簡単に行えるようになったり、その部品そのものが不要になったりしてモノづくりが格段に楽になることがあります。
だったら最初からそういうように設計してあればもっといいに決まっています。でも設計者は現場のモノづくりをあまりよく知らないのでそれができないということが多いのです。
そこで設計者にモノづくりをもっと知ってもらうために、設計者が現場で作業実習をしたらどうかという意見が出てきます。
しかしこれは「言うは易し、行うは難し」、ただでさえ忙しい設計者にそんな時間あるわけないだろうという声が即座に出てきます。
私もそうだよなと思います。そこで妥協案です。
もし設計の途中でその内容を検討するDR(デザインレビュー)の機会がある場合は、その会議に生産現場でモノづくりを担当している方あるいはそれを熟知している方にも参加してもらってください。そして設計途中でも、こうしてくれると作り易いといった現場からの意見を入れられるようにしてください。
自動車業界ではこのようなことは当たり前に行われています。コンカレントエンジニアリングとかサイマルエンジニアリングといわれているようです。
あるいは試作や正規立ち上げの時は設計した人が必ず立ち会うようにできませんか。忙しくてもそのくらいは時間を取れるでしょう。
このような機会を通じて設計の方々もモノづくりの要点を学んでいくことができます。
設計段階から品質が良ければコストも納期も格段に良くなります。無理だと言わずに一つでいいから、少しでいいからやってみて下さい。よろしくお願いします。
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2017.11.02
これからの変化の時代に向けてのカイゼン[16] 【急所65】 設計改善は、現場改善に100倍勝る。(2)
先回は現行の製品の設計変更の話をしましたが、今回は設計に対する情報の大切さの話をいたします。
今回はつい最近、指導先のO社で経験した改善の話をします。今現在の人が足りないのに注文が増えるという嬉しい悲鳴が上がっている状況に役に立つと思ったからです。
と
仕事がない状態はとてもつらいものです。しかし仕事が来るけれどこなせないという状況もつらいです。「嬉しい悲鳴」ということは、いくら嬉しくても悲鳴ですから。ギャーッ!
O社も同様の状況です。みんな残業をして頑張っているけれど仕事は遅れ気味。このままではブラック企業になってしまう…という状況でした。
私は社長や皆さんと一緒に現場で作業の状況をしっかりと見ていましたが、事態を好転させるようなアイデアは出せませんでした。これまでもズーっと改善を積み重ねていましたから、かなり作業のレベルは高いのです。
そこで私は作業をしているSさんにちょっと声をかけました。「Sさん、今何やってんの?」
すると返ってきたSさんの答えはちょっとビックリでした。「設計に抜けがあったので手直しだよ!」
何が起きてそうなったのか???を聞いていくと、以前は会社も小さくて事務所にみんな一緒にいて仲良くワイワイやっていた。その時は営業の人たちは注文が取れると、まずみんなに今度の注文は、材料は何、形状はどう、ここ注意して、などと事前に情報をみんなで共有化していたのだそうです。するとSさんはその場で何を準備するかが分かり外段取りができました。またこれまでの経験から設計の人たちにこうしてくれると作り易いといったアドバイスやお願いができたのです。設計の人たちもその場でいろいろ質問できたので事前に間違いを避けることができたのです。未然防止ですね。
ところがその後会社は大きくなり、事務所も大きくなり部署ごとが離れてしまい、そのようなコミュニケーションができなくなり間違いが増えているとのことでした。そこにいた社長もみんなもびっくりです。でも全員納得。そこで即断即決、事務所のレイアウト変更です。
これまで営業島、設計島、管理島といった感じの工程別配置だったのですが、商品ごとに営業も設計も管理も一緒の商品別配置に変えました。お席替えです。
目で見えることだけで判断していましたが、見えないで気付かなかったところが見えたのでできた改善でした。この改善はものすごく大きな効果を生みそうです。ご参考になさってください。