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2016.08.27
机の下に隠されていた素晴らしい改善 前回の話の続きです。パートさんが実行してくださった改善について、その内容をご紹介しましょう。印象に残っている素晴らしい改善はいくつもあるのですが、例えば、計測器メーカーのY社で改善指導をしていた時のことです。Y社の計測器の計測部は自動化が難しくほとんどの部分が人手作業によるもので、それぞれの作業に専門の作業者がいました。
その結果、いくつかの工程に分割された作業の場合、生産ロットサイズが50個だとすると、各工程で50個ができあがるまで次の工程には行かないので、完成品ができるまでとても長い時間がかかっていました。その結果、しばしば納期遅れが出て困っていたのです。
ところが、その中でパートタイマーのIさんが何か言いたそうな顔で私を見ていたので、私は「Iさん、何かいいアイデアある?」と質問を投げかけました。
するとIさんは、「すみません、こんなこと言ったら工場長に怒られると思うのですが、実は本当に間に合わない時、私は一人で全部やるやり方をしているのです。これだとはやいのですが、勝手にやっているのでよほどの時しかやりませんが…。」とのビックリ発言をしてくれたのです。
そこで私は、「Iさん、それは素晴らしいことですよ、よく言ってくださいました。ちょっと急で申し訳ないけど、今ここでやってみてくれませんか?」とお願いしました。
するとIさんは机の下から内緒の木製の作業台を出してきて、必要な部品を集めて一人作業を開始しました。
その結果何が起きたか...ですが、これまで一週間はかかると言われていた製品が1台だけですが20分でできてしまいました。
そこにいた工場長はびっくりしていました。そしてその日からI さん方式の改善が始まって全社のリードタイムは激減し、納期の問題はあっという間に解決したのです。叱られるのではと心配していたIさんですが、思いっきり褒められたのは言うまでもありません。
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2016.08.27
みんなでやる 「改善なんて専門家の方がやることで、私のようなただのおばちゃんにはとても無理です」これはある会社の現場で働いているパートタイマーのMさんから言われた言葉です。
しかしその方の仕事のやり方を見てみると、ものすごくたくさんの改善が実行されていたのです。例えば、使用するカッターやハサミが持ちやすいように持つところにガーゼのようなものが巻き付けられていたり、長さを測るメジャーが作業机に貼り付けられていたリ...。
そこで私が、「Mさん、すでにこんなにたくさん改善をされているのに何をおっしゃるのですか、これってすごいじゃないですか!」と言うと、Mさんは驚いて、「えっ、これで改善になるんですか? こんなのでいいのならいくらでもできますよ」と私を驚かせて喜ばせてくれました。
改善という言葉は少し大げさにとらえられていると思います。ちょっと不便、ちょっとやりにくい、ちょっと面倒くさいといったちょっとのことを一歩踏み出して楽にするのが改善です。
ですから本当に当たり前に思えることでも実行すると立派な改善になります。そして本当に小さな改善でも、もしみんなでずっとやり続けると何と会社の経営が良くなり、会社が大きく進歩向上するのです。
どんなに小さな改善でもいいですから、みんなでずっとやり続けましょう!
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2016.08.19
すぐやること 「改善とはどういうことでしょうか?」というストレートな質問を受けたら何と答えようかな…、と考えたことがあります。
改善のコンサルタントをしていますから、聞かれなくてもいろいろな形で改善を説明しています。前回は受験との違いという言い方で説明しました。
しかし、答は一つだけ、と限定されてしまったらと考えて出した答えは、
「すぐやること」
にしました。単純ですがこれが大切だと思います。
私がやる改善は銀行から大きなお金を借りて一か八かでやることではなく、みんなが力を合わせて自分たちでやる改善です。ですからもし間違ったら元に戻せばいいという軽いノリです。もし間違ったら元に戻すけれど、その経験も他では得難い大切な経験になります。もちろんうまくいったらまたその次を狙います。
失敗したらどうしようとか、これっぽっちのことやったって意味がないとか言わないですぐやること。これをみんなでずっとやり続けることで結果として大きな改革につながるのです。
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2016.08.12
改善と受験、どう違う? 多くの皆様は受験の経験があると思います。
最初に受験とはどんなものか、考えてみます。
まず、満点を取らなければ受からない、、、ということはありません。たいていは7割も取れば御の字、という感じですから、受験生は100点を取るためのものすごい高度な勉強より、失敗しないよう幅広くまんべんなく取りこぼさないような勉強をします。それからカンニングは絶対に許されません。また始まる時間も終わる時間も厳守です。そしておしゃべりも禁止です。
では、改善は? ですが、7割では勝てません。7割はどこでもやっているレベルで、そこから先の3割をいかに早く実行するかが勝負です。最後の1割ができたら世界レベルへの挑戦になります。
えっ、あの厳しかった受験でも7割でいいのに、改善はそれではだめなんですか! 受験より改善の方が厳しいんですか? と思う方もいるかもしれませんが、そこだけ見るとそうも言えますが、全体を見ると全く違います。
まず改善はカンニングありです。工場見学に行って見たり、本で読んだりして仕入れた他社の情報をそのまま実行してかまいません。マネ大いにありです。そして時間も早く始めたり、あるいはできるまであとちょっとと言って頑張ったりはほめられます。そしておしゃべりは大歓迎です。ぺちゃぺちゃしゃべりながら情報を交換してアイデアを練ってより良いモノを作りましょう。
いかがでしょうか。私は65歳になった今でも時々受験で時間が迫っているのに答えが書けないで焦っている夢を見ます。楽しくなかったので思い出したくもないという感じです(といって夢に見ていますが)。
一方、改善は社会人になって以来、40年以上、進んでやっています。楽しいからです。みんなで励まし合いながら、一歩一歩前進して、その成果を分かち合える楽しさです。
いかがでしょうか? 改善がどんなものか、何となくお分かりいただけましたでしょうか?
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2016.08.09
今週の改善(1) 週、その週にあった改善の話や、その時々の改善の話題、あるいは改善にかかわるミニレクチャーをお届けいたします。
まず第一回目の今回は、私が目指している改善のやり方についてお話しいたします。
「改善」とは「善く改める」ことですから、やった方がいいに決まっていることです。どんなことであっても良くなったのであればその行為は「改善」と言っていいと思います。
ただ実際には、「改善」ということを固く仰々しくとらえて、「金額的に大きな成果が出なければいけない」とか、「誰のマネでもないユニークなものでなければならない」といった感じの理解がされている場合が多いように感じます。
私が目指していることは、組織に属する全員がそれぞれいつも何かを改善しているような改善大好き集団を作ることです。どんなちょっとしたことであってもそれを全員が全力で実行している感じです。
世の中は本当にすごいスピードで変化していますし、そのスピードが益々速くなっていると思います。去年無かったモノが今年あり、今年ないモノが来年登場するという感じです。
これから世の中がどのように変化していくかはかなり不透明です。しかしどんな変化が起きても大丈夫な準備というのがあるのです。それは会社の全員が常に改善を実行することに一切の違和感を持たない組織です。
身の回りの小さい問題は全員が自分で改善して解決します。全社にまたがるちょっと規模が大きい問題には全員が集まっての改善。そしてびっくりするような大きな問題が起きた場合は、社長をリーダーとして全員が改善するのはもちろんのこと、近所の会社や、協力メーカーやあるいは同業他社、そして大学やネットで助けてくれる人を探したりすることも含めてみんなで会社を大きく変えていくのです。
そのようなことができるようになるにはどういうことをしていけばいいのか? 考え方と体の動かし方の両面からそのアプローチをして見たいと思います。どうぞよろしくお願いします。