-
2018.01.29
世の中の変化と日本の製造業が抱えている問題点[3] 先回は世の中の変化として見える部分を書きましたが、今回は見えない市場とモノづくりの変化に付いて書いてみます。
しかしここまで述べてきたことだけでは済まされない。市場そのものが大きく変化しており、その結果モノづくりも変わらざるを得ない状況になっている。
作れば売れる時代ではプロダクトアウトの少品種大量生産のモノづくりで十分であった。当時はQCサークルのような品質向上や能率向上を実現する現場改善活動が生産能力を拡大し収益向上に大きな成果を生み出した。
その後、次第に品種が増えてくるとマーケットインの多品種少量生産に移行した。その際、顧客を待たせずかつ在庫を増やさないで注文に応えるため、モノづくりはトヨタ生産方式に代表される売れたモノを短時間で作り補充する生産方式が広まり、生産リードタイムの短縮が進み日本の製造業の評価が高まった。
しかしそれにもかかわらず日本では既に多くの中小零細企業が倒産や継承者不足で姿を消している。5Sもムダ取りも十分に行って生き残ってきた高いレベルの工場でも昔のようには売れないし、また売れても儲からないというところが多い。そして現場は日々の生産出荷だけでもかなりギリギリで、現場監督者を中心にかなり追い詰められた状態でやりくりをしている。その結果、これまで一生懸命改善し現場力を高め、日本国内では無敵と思われる実績を上げている企業であっても、当の社長がこのままではダメだと不安を感じていることも多い。
Question 日本のモノづくりはトヨタ生産方式に代表される高いレベルの実力を持っています。それにもかかわらず苦戦を強いられているのも事実です。なぜだと思いますか?
先回JDパワーの米国自動車初期品質調査のことを書きましたが、詳細は下記サイトをご覧ください。
http://japan.jdpower.com/ja/press-release/2017%20US%20Initial%20Quality%20Study%20%28IQS%29/JP
-
2018.01.22
世の中の変化と日本の製造業が抱えている問題点[2] 毎日寒い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。私はうがいと手洗いを頻繁にすることで風邪対策をしています。では先回の「一体何が起きたのだろうか?」からの続きです。
一体何が起きたのだろうか?
日本は国力の向上に伴い賃金の上昇が始まり、賃金の安い外国人労働者を使うことや海外で一部の部品を生産することは以前から行っていた。しかしバブル崩壊で極端に売り上げが低下し、利益を維持するため大幅なコストダウンが必要となり、家電業界を中心に多くの企業の生産拠点の中国等海外移設に拍車がかかった。その結果、国内での仕事が減りかつ技術の流出も起き、更には海外の需要に応える仕事が海外に移った。
また家電製品ではグローバル化に際して現地ニーズに対する適応力の不足のため商品力が低下した。加えて薄型テレビのようなデジタル家電においてはモジュラー型生産におけるグローバルな部品調達への対応遅れによるコスト競争力低下もあり更なる競争力の低下が起きた。
自動車業界においても近年のJDパワー米国自動車初期品質調査の結果を見ると、品質に対する評価が機能品質中心からデザイン品質も対象となって来ていて、日本車は以前のようなダントツの品質評価を得られておらず、むしろ韓国や欧米の車に抜かれる時もあり、安泰な状況とはいえなくなってきている。
さらには、少子高齢化によって労働人口の急激な減少が起きており、現場労働力は質・量ともに不足傾向に突入し、技能伝承の問題も深刻さを増すことになる。例えば生産の現場には日本語を理解しない外国人や、日本人であっても経験が少ない派遣社員が多い。定年退職による世代交代もある。そのなかで、技能伝承だけでなく現場力を高めてきた改善活動もやめているといった会社も多く見かけることになる。特に、中小のものづくり企業の経営者がこの状況を深刻に受けて止めて、これからの経営のあるべき姿や体質改善の進め方に悩みを抱き、模索する時代になってきている。
Question 何が起きたかについて私の考えを書きましたが、実際にはもっとたくさんのことが起きています。ご存知のことを教えて頂けませんか?
-
2018.01.17
世の中の変化と日本の製造業が抱えている問題点[1] 皆さま、良いお年をお迎えになられたことと存じます。今年もどうぞよろしくお願いいたします。
年が明けて初めての文章をお届けいたします。昨年までは私の著書である『儲かるメーカー 改善の急所101項』から大切な項目を選んで解説をしてまいりましたが、今年はもう少し現実に沿って具体的な話を進めていきたいと思います。
日本の製造業は残念ながら以前と比べると明らかに競争力を失っています。1章でその原因を分析し、2章で日本の製造業が持つ本来の強味を明確にし、そして3章でそれらの結果を用いてどうやって日本のモノづくりを強化していくのかをご提案したいと考えています。
もしお読みくださった方からのご意見もいただければ、そこからまた新しい議論も始められる可能性も期待します。
1章 世の中の変化と日本の製造業が抱えている問題点
日本の製造業には世界のモノづくりの先頭を走っていた時期がある。そこでは、Q,C,D(品質、コスト、納期)が競争力のベースになっており、抜群の現場改善力が大きな役割を担っていた。
また小さくて軽くて音が素晴らしいウォークマンや、丈夫で「走る・止まる・曲がる」の基本性能が抜群のコンパクトカーに代表されるような日本の技術力の粋を集めた商品もヒットし、高い収益力を誇っていた。しかし現在、残念ながら日本の製造業は当時の勢いを失っている。
一体何が起きたのだろうか?
Question 次回以降に私が考える答えをお伝えします。その時までにこの質問に対する答えを2つ以上考えておいて下さい。
今年もみんなでより良いモノづくりの達成を目指して頑張りましょう!