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2017.12.28
これからの変化の時代に向けてのカイゼン[24] 【急所82】 モノを捨てるとチエが出る。空間をつくるとアイデアが生まれる。
この号が今年の最終号になります。一年が経つのは本当にはやいですね!
この時期になると多くの方が自分の仕事場やあるいは自宅の片付けを始められることと思います。そこで今回は整理整頓の整理をテーマに選びました。
整理整頓は一つの言葉ではありません。整理と整頓のそれぞれの意味ですが、整理は要らないモノを捨てること、整頓は要るモノを使い易く並べることです。
ご自分の家で整理をする場合は自身の判断で要るか要らないかを決められるので、このやり方でいいでしょう。しかし会社のように多くの方々がかかわる場合は、要るかどうかの判断が人によって違うので決めるのに手間取ったり判断できなくなったりします。そこで組織で行う場合は一定期間の中で使うか使わないかで分けて、使わないモノを捨てるようにするのがいいと思います。
その時に大切なことが二つあります。
捨てるのは簡単ですが、今日作ったり買ったりしたものが一年後の今日にまた捨てられてしまったらもったいないですね。そこでどうしたらそうならないかのチエを出して作り方・買い方の改善をしてください。
そしてもう一つポイントがあります。多くの方がモノをたくさん捨てて満足してしまうのですが、その反対側に大切な宝があるのです。それは捨てられたモノが置いてあった場所です。いかがでしょうか、スカッと空き地になっていませんか?
この空間がこれからの時代にとても大切なのです。これからもっと多くのお客様を獲得し新しい仕事を始めることになるでしょう。その時に必要なのは場所です。ほとんどの工場は既に場所が狭いのです。しかし整理をすることで場所が空くという発見は、お金を使わないで経営資源を手に入れられるということです!ある一か所で場所が空いたら、全工場ではもっともっと場所が空くはずです。
世の中の変化を取り込んだ将来を見据えて、空間を広げて活用する経営のアイデアを生み出しましょう。
今年一年、大変にお世話になりました。どうぞ皆様良いお年をお迎えください。来年もどうぞよろしくお願いいたします。
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2017.12.21
これからの変化の時代に向けてのカイゼン[23] 【急所76】 モノの流し方を疑え。(2)
先回、私たちはついつい物事を習慣的に見てしまうし、考えてしまうといったことをお話ししました。
例えばコンベアを使った自動車の組み立てラインを思い浮かべてみて下さい。頭の中の組み立てラインではコンベアに自動車のボデーが進行方向・前向きに載って動いていませんか? あるいは電気モーターで走る電気自動車とガソリンエンジンで走る普通の自動車は別々のラインで組み立てられていませんか? これまでの常識では自動車はコンベアの進行方向に向いて動くし、全く構造が違う車種は別のラインで組み立てられるものでしょう。
しかし現在ではコンベアに対して横向きに置かれた組み立てラインができています。確かにこうすることでコンベア全長が短くなるので面積や設備管理や投資額や管理等で有利な面が多くあるでしょう。あるいは日産自動車追浜工場ではガソリン車と電気自動車は同じラインで同時に組み立てられています。
三菱自動車 横置きライン
https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/653693.html
セントラル自動車(トヨタ自動車子会社) 横置きライン
https://blog.still-laughin.com/archives/2011/01/post-5496.html
日産自動車追浜工場 電気自動車(リーフ)組み立てライン
http://www.nissan-global.com/JP/PLANT/OPPAMA/
これらは一回見てしまえば当たり前のように思えてしまうのです。しかしそれまでなかった新しい考えを生み出し実現するのには相当のご苦労があったことでしょう。こういうチャレンジングなアイデアとそれを実現するまで頑張るガッツはこれからの日本の製造業には極めて大切なことです。
先回お伝えしたE・C・R・Sを使って新しいモノの流し方を生み出しましょう!
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2017.12.15
これからの変化の時代に向けてのカイゼン[22] 師走! 街はクリスマス飾りでいっぱいです。昔から今までずっとこの時期ウキウキします。さて、今回は、
【急所76】 モノの流し方を疑え。(1)
私たちは物事を習慣的に見てしまう傾向があります。これまでずっとそうであると、たとえそれが間違ったことであったとしてもそのことに気付かないということがよくあります。
私は30年くらい前にアメリカで電子メールというものを初めて見ました。その時に相手の人が「すごいだろう!」と言っていたのですが、そのすごさに気付かず「ファックスとどう違うのですか?」などとトンチンカンな質問をしてしまったことを覚えています。
きっと私は今でもそういう間違いをしているんだろうなあ…と思います。
しかし世の中の変化は本当に速いです。あるべき姿に向かってドンドン改善を進めていきたいものです。
そこでこれまでのやり方を疑うということも重要になってきます。
そのための切り口として私がよく使う方法は、”E”, “C”, “R”, “S” です。
E:Eliminate なくせないか?
C:Combine あわせられないか?
R:Rearrange 順番を替えたらどうか?
S:Simplify シンプルにできないか?
私は「イーシーアールエス」と呼んでいますが、「エクルス」と呼んでいる方もいらっしゃいます。
早速現場に行ってそれぞれの工程について上記の4つの質問をしてみて下さい。
すぐにできなくても、簡単にできなくても、安くできなくても、すぐにできないと諦めないで、質問にたくさん答えを持ってきてください。
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2017.12.11
これからの変化の時代に向けてのカイゼン[21] 3回前の62話で【急所65】 設計改善は、現場改善に100倍勝る。の項の最終回として締めくくったのですが、すみません、書き忘れたことがありました。今回はそれを改めて書かせていただきます。
【急所65】 設計改善は、現場改善に100倍勝る。(5)
これまで4回にわたり設計の段階でしっかりと改善を織り込んでおくことがとても大切で、それをしないままに現場で生産を開始してしまうと、いろいろな面でムダが発生して現場が大変な苦労をするということをお話ししました。
しかしいったん良い設計ができたらもう現場改善は必要なくなるのか?!というと全くそうではありません。逆です、もっと必要になるのです。
良い設計はライバルに必ず真似されます。ライバルメーカーも本当に良い設計の商品があなたの会社から出たら、すぐに分解して調べて自社の製品設計に反映させます。設計は真似されやすいのです。
そこで次のステップで現場改善の登場です。良い設計の下で、更に在庫を減らしてリードタイムを短縮し、治具を作ったり作業訓練をしたりして品質を上げるのです。良い設計による高い「生まれの品質」を今度は現場改善で磨いて高い「育ての品質」に持っていくのです。
設計は真似られても現場改善は真似られません。このように設計と製造が共にタッグを組んで最高の改善を行うことによって盤石にすることです。これが全体最適の改善といえるでしょう。
設計段階から現場での作り易さを織り込み、それを更に現場改善で磨いてで誰にも真似できないレベルのパフォーマンスに持っていきましょう!
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2017.12.05
これからの変化の時代に向けてのカイゼン[20] 今回は『儲かるメーカー 改善の急所101項』【急所39】の解説です。
【急所39】 問題は、見えるようにした時点で八割解決する。(2)
先回の文章は、「すぐに現場に行って見えていないモノを探して見えるようにしてください。」で終わりました。いかがでしたか、見えていないモノが見つかりましたか?
先回のマンガで社長が「とんちじゃないわ!!」と言っていましたが、まるでとんち問答のようだと思った方もおられたかもしれませんね。そうなんです、「見えていないモノが何か?」はかなり高度な問いかけです。
でも実は見えていないモノは驚くほどたくさんあります。例えばトヨタ生産方式の「7つのムダ」。は見えますか?
つくり過ぎのムダ、手待ちのムダ、運搬のムダ、加工そのもののムダ、在庫のムダ、動作のムダ、不良を作るムダ、この7つのムダのない工場はないでしょう。どこにいってもたくさんあります。しかしそれらの多くが見えない状態で存在しているからたちが悪いのです。もしこれが全部見えるようになって、すべてをみんなで改善していったら不良はゼロになりコストは半減するのではないでしょうか!
そこでこれからこの7つのムダの改善を始めたいと思います。今日はその初日です。早速宿題を出しますね。
この7つを暗記してください。手帳に書いておいてその都度見るでは遅すぎます。頭の中にこの7つのムダをがっちり彫り込んで、現場に立って周りを見ると、次から次へとこのムダが見えてしまい気になってしょうがないという状態を作るのです。そのためにはまず暗記すること、そうするとこれまで見えなかったムダが次々と目の前に現れます。ムダが発生したのではありません。元々あったのに見えなかったので放置されていたのが見えるようになったのです。
とはいえ、この頃はコンピュータやスマホなど便利なツールの発達のお蔭で、私たちは日常生活でモノを暗記する必要がほぼありません。ですからたかが7つといえけっこう苦労する可能性があります。私がそうでした。26年前にコンサルタントになった時に、この暗記がなかなかできなかったという情けないスタートを切ったのです。
そこで私はつくり過ぎの「つ」、手待ちの「て」、運搬の「う」と頭文字(?)を並べて「つてうかざどふ」といって覚えました。これはトヨタ生産方式の順番ですが、順番を気にしないなら「かざってとうふ」でもOKです。
リーダーには武器が必要です。7つのムダの暗記はその一つです。次回までに頑張って武器を一つ増やしてください!